まだ若い3歳と5歳のママ。余命2年半。昔なら、とっくに死んでいたと部長直々に言われたそう。
いろんなことがあった今日だけど、もう、そのことしか考えられない。
今までで一番ショックを受けている。
愛する我が子の成長を見届けられないかもしれない。残された時間を、私ならどう過ごすだろう。
乳がんと初めて告知された時にぐるぐると頭の中を巡り、涙が止まらなかった想像を、現実のものとして受け入れて生きている女性が、いま、隣に、寝ている。
※夜が明けて昨日の追記
朝から雨。朝食前の散歩をしようと濡れない渡り廊下に出て歩き始めたらすぐに、くしゃみが止まらなくなった。激しい雨で花粉が巻き上げられているのか。観念して情報室へ避難。
10時、放射線治療に来ているというNさんと一階で待ち合わせておしゃべり。初回の手術時にずっと一緒だった女性。術前の抗がん剤治療で腫瘍がなんと約10分の1まで縮小し、その残っている腫瘍がこれまでの診断のトリネガ(ホルモンやHER2といった治療が有効でなく一般的に予後が悪いとされているタイプのがん)ではなく、ホルモンタイプだったため、トリネガの唯一の治療薬とされる抗がん剤以外に、今後、ホルモン治療もできるとのこと。一つのがんをくるむ形で別のがんが増大するなんて、そんなことがあるんだ! でも、よかったねーと言い合う。治療の選択肢は多いほうがいいから…
彼女は私より若く、まだ園児と乳児を抱えている。私と同じく、食事を見直して、乳製品や肉類、添加物に敏感になり、抗がん剤で食欲が落ちたことと相まって、なんと9kgも痩せたそう。さらに、前はやるべきことがあったらリストにして就寝前にそれが全部終わってないと気が済まないというきっちりした性格だったのに、今の口癖は、「ま、いっか」。随分適当になり、子供のこともキーキー怒らなくなったそう。これも私と同じ変化だ。「これだったら自分も食べるかな」というセレクトで無添加のカモミールティーともち吉のおかきをお見舞いに持ってきてくれた。ありがとう!
恐らく新しい人が入院してきている頃だろうから、お昼ごはんギリギリにのんびり部屋に帰る。
空いていた2つのベッドは既に両方が埋まっていた。一人は前回お風呂で一度一緒になって、感じがいいなぁと思っていた女性。もう一人も前に見かけたことがある人で、そのおしゃれさに思わず「かわいいですよね~、そのバンダナどこで買ったんですか?」と聞きたいとずっと思っていた女性だった。うれしかった。ちなみに、2人とも私よりずっと若い。
お昼を食べながらおしゃべりになり、Mさんが「私は再発率が28%と言われたが、抗がん剤とハーセプチンをするとそれが8%まで下がると言われた」という話をすると、後者のおしゃれな女性が「私は先生から再発率は確率の問題だから伝えてもあまり意味がないと言われた。余命は言われましたよ」。一同固まる。「2年半」と彼女は言った。
あとから彼女がまだ小さい2人の子どものママだと知って、やりきれなくなった。その後、彼女とふたりきりになった時には、膝を突き合わせて話し、今後がんは日本から無くなるという希望が持てる本の話とか、余命3ヶ月と言われながらがんを消滅させたムラキテルミさんの話とかを教えた。私にはそのくらいしかできなかった。
しかし、大部屋での話題選びは難しい。私も昔はつい口をうっかり滑らせて人を傷つけ、それからはあまり自分から積極的に話をすることはしなくなったし、言葉を発する前に必ず大丈夫そうか確認するようにしている。それでも、まだ時々、誤ってしまう。
今日の入浴時間は午後。前回、貧血を起こしたので今回は慎重に。食後すぐは良くないだろうからと15時ギリギリに行ったら、なんとあと15分しかないのに6人も待っている!こりゃダメだと諦め、看護師さんに体を拭くタオルをもらう。
昨夜もちょくちょくトイレに起きてあまり眠れなかったので、夕方は、みんなのおしゃべりをよそに、私は一人、横になる。でも眠れなかった。
夕食後は、初対面同士が同部屋になると必ず開催される、止まらないよもやま話。誰もテレビすらつけず、21時まで話し続けた。当然、最初に「すいません、そろそろ私は…おやすみなさい」とカーテンを閉めたのは私である。ホントみんな話好きだよなー。MさんがA型のダンナさんのことがストレスだとか悪口ばかり言うので、「でもけっこう結婚生活が長いご夫婦でも、乳がんになってから、ダンナさんに“君と結婚してよかった”て言われた人、いっぱいいますよ」と言ったら、Mさんが驚いてお茶をこぼしたのがおかしかった。そしてMさんのイエス様話がエスカレート。ご本人じゃないんだけど、職場の人に手かざしで病気を治した人がいるとか、その人は皆が見えない天使や悪霊が見えるとか、自分も軽い気持ちでやってみろと言われてお祈りしたら効果があったとか、延々話し続けるので、正直みんな引いていた。私は抵抗ないからいいけどさー。2人きりならもっと聞いてみたいような話だけれど。
本当に、話題選びは難しい。私はなんとかそこから話をそらして、みんなで笑える話に持って行こうと軌道修正ばかりしていた。つくづく思うけど、やっぱり私は自分が笑わせてもらうより、人を笑わせるほうが数段好き。自分の話でげらげら笑っている人を見る時、この上ない幸せを感じる。それが自分の子どもでも、他人でも。