コトノハマニア

言葉を紡いで生きていく

抗がん剤FEC 2C 5日目

早々に寝付いたはいいが、一時間おきにトイレに起きる。誰かの呼吸が止まったらしく、◯◯さん大丈夫?!ゆっくり息して!先生呼んで!と看護師さんが慌ただしく叫ぶのを夢の中みたいに聞いていた。

昨夜で終わり、やっとワイパックスの呪縛から解き放たれて頭がスッキリしてきたので、朝イチでポヨさんから借りた、『キス・オブ・ドラゴン』観た。巨大麻薬組織に挑む敏腕警察官と娼婦という、普段ならぜーんぜん興味ないテーマだが、まあ話は置いといて、ジェット・リーのルックスとアクションで十分楽しめた。

いいひまつぶしになった。途中で別室のミィ姉さん(昨日青汁をくれた人)がやってきて、やにわにコップに粉末紅茶を入れ、お湯まで注いでレモンティを作ってくれた。至れり尽くせり。私は映画観たままなのに。セレブか。

しかし、この飲みつけないレモンティが効いたようで、薬も飲まずにどっさり便が出た。気持ちいい!

今日も女性は午前が風呂なので、昼前からのんびりお風呂。30代の子宮がんの女性と一緒になった。子宮とその周囲ぜんぶ摘出して抗がん剤を頑張ってるのに、医師からやめようという話になったらしい。しかも、今後予定している放射線も…なんで?効いてないってこと?アタマの中は疑問と不安でいっぱいなのに、婦人科のチャラい医師は説明もせず、ボク休暇だから~!といなくなってしまったのだそうだ。

ひとごとながら頭に来る…つか、切ない。若い子の病気は切なすぎる。なんで、癌なんかになるんだろう。いや、私もいろいろ調べたけど、なんで、癌になるような食べ物がガンガンCMして、普通に売られているんだろう。おかしいやろ、この国。あ、この国だけじゃないや、世界がだ。

もちろん、元から食に対する意識の高い人や、たまたま子どもにアレルギーとかがあって食に目覚めた人は知ることができるけど、何も知らない人はそれこそ死ぬまで体に有害なものを摂取しつづけるんだ。あなおそろし。

なんか気分的に落ちてしまって、帽子を目深にかぶってアイマスク状態でグロってたら、突然、母の言葉を思い出した。

どいて、邪魔、あっちいって、うるさい…母からはそんな言葉しかかけられたことがなかったなぁと。まあ多分物心つく前はあったと思うけど、おいで、とか、一度も言われたことない。抱っこの記憶もない。つか、触れ合ったことがない。いま、手なんか触れたら、はっきり言ってゾッとする…

昔はそういう母を一方的に恨んだけれど、弱っている今は少し気持ちがわかるようになった。つい先日、兄弟はいっぱいいたが、末っ子でトシが離れてたから、誰とも遊んでもらえずいつも一人だったっ言っていた。初めて知った…たぶん、母自身が、ずっと邪魔にされて育ったのだろう。彼女も私同様、子どもにそういう接し方しか出来なかったのだ。自覚がないだけで…

父親も親の愛情を知らずに育った。たぶんすごい吸引力でくっついたのだろう。父の愛は母のすべて。それを奪うものは彼女の存在を脅かすものだ。それがたとえ生まれたばかりの赤ん坊だとしても。私は生まれた時から邪魔者だったのかな…

でも、ま、母のことは許す気になりました。なんか、もう怒る気力がない。そのエネルギーがムダな感じ。

お昼。久しぶりの雑穀米が美味しかった。ホント罰あたるけど、白飯って三食ずっと食べてると飽きるのよ…かと言って毎朝食をパンにすると乳が入ってるし付け合わせもマーガリンとかドレッシングやし、麺類はぜんぶ恐ろしくまずいし…いまはご飯にちょっと手が加わったのが最高に嬉しい。オムライスとか食べたいな。

午後、ポヨさんが、コーラが飲みたいと言うのを聞いて、私もモーレツに炭酸が飲みたくなってしまい、売店へ。しかし、買ったのはアンパンとアイスコーヒー。やっぱパンの誘惑には勝てなかった。その後、戻ってきてから、自販機で小さなスプライトを買った。うまかった。

iPhoneの筆まめで年賀状の宛名整理を始めたが、思うようにいかないのでやめた。いま同部屋の人は私以外60-70代なので、話も合わないし、一人の時間が持てて、嬉しい。

夕方から引き続きポヨさんに借りたDVD。夕食まで夢中になって見てしまった。『宇宙戦争』。太陽フレア、わけわかんない宇宙人からの容赦ない攻撃。破壊破壊破壊!忍び寄る影に休む間もない。逃亡逃亡逃亡!あーもういい加減にしてやってくれ!反撃?そんな無茶な~っ!

などと、相変わらずまったく趣味じゃないにもかかわらず、すっかりハマって最後まで観てしまった。面白かったから調べたら、スピルバーグなんだね。さすが!と思ってしまった。ラストのナレーションがよかった。「(すべての生態系がつながっている)この世には無駄な死など一つもない」そうだ。基本的に小難しい映画が好きだけど、こういう頭使わない映画もたまにはいいわ~。何より格好の時間潰しになる。

夕食時に話したけど、隣の抗がん剤中の女性は味覚障害がひどく、塩気も酸味もまるで感じなくて、口にモノを入れると、ただ、なんともいえない苦味だけがするそうだ。食事は苦痛でしかないと言っていた。私はまだいいほうなんだな~。やっぱFECにはみんな泣かされる。あと二回、頑張れるかな。がんばろうとか思うと、それだけで疲れて気が萎えるけど、なんとか適当にうまくやりすごしたい。