コトノハマニア

言葉を紡いで生きていく

ハーセプチン+治験薬 5C/12

車であっくんを送り、その足で愛宕神社&音次郎稲荷を詣でる。音次郎さんに神妙な気持ちで御礼を言っているのに、もろもろ雑念が湧いてきて困惑していたら、まるで便乗するように、いや、私の心の中を映し出すように頭の周りをハエが飛び回りだしたので、おかしかった。まさに、「五月蝿い」だ。

あー、もうー、原稿書かなくちゃいけないのに! でも家を出る時、きのう深夜に仕事をしていたダーはまだ眠っていたし、一人じゃないと仕事がはかどらないのは私も誰かさんと同じ…。それにダーが帰ってしまう今日からまた料理も全部自分でやらなくちゃだし、とにかく明日から原稿に集中できるように、食材の買い出しを済ませてしまおう!

というわけで、夢広場。福神漬用のレンコンが無かったので、木の葉モールまで足を伸ばした。でも今日は時間がもったいなかったので、八百屋は寄らず、たまたま新モノが揃っていたサンリブで野菜も全部調達した。

帰宅し、ピンチヒッターさんにお願いしている企画書のチェック。残り物の冷麦や野菜炒め等で昼食。庭を名残惜しそうに見ているダーに「安納芋が気になって帰りたくないんじゃない?」と言う。車で彼を駅まで送る。

やっと原稿。超特急でやってみる。編集さんが東京だから取材に同行できず、テキストを全部起こして送ったりして、ただでさえ時間がかかっているので、早く書いてコスパを上げないと。

今日は一人であっくんを歩いて迎えに行った。

18時半、3人で晩ご飯。昼のうちに作っておいた、ごはんと、野菜いっぱいのトマトスープと、もやしのナムルと、豚バラの塩焼き。朝から歯を痛がっていたカズはほとんどギブアップ。あっくんは、カズの肉ともやしを食べ、食前にとうもろこしを食べ、食後にバナナも食べた。

宿題をしているカズが突然、「あ!」と言った。聞けば、友だちの音読カードが自分のものに挟まっていたという。「明日学校で返せばいいじゃん」と言うと、「でも、きっと、困ってるよね…」と下を向いた。部屋はわからないけどマンションはわかると言うので、じゃぁごはんを食べたら散歩がてら届けに行こうかということになった。

片付けをしながらカズと色々話す。「もしかして学校まで探しに行ってるかもね~、性格にもよるけど。真面目な子?」と聞いたら、「ううん。いつもおれのことぶったりしていじめてくる」「………」。そして、いつも最悪のケースを想像してしまう私が、「ねぇ、いまママ考えたんだけど、届けて感謝されるとは限らないかもね。音読なんかやりたくなかったのに、カズが届けたせいでやらなくちゃいけなくなったって逆ギレされるかもしれないよ。それでも届ける?」と聞いたら、とりあえず行ってみる、とのこと。

あっくんの手を引いて、みんなで歩いて行く。ちょうど2年前の6月に越してきたこともあり、引っ越してきたばかりの頃を思い出した。

一度だけ遊んだことがあるというカズの記憶を頼りに到着。ラッキーなことに郵便受けに名前が書いてあったので部屋もわかった(福岡のマンションは記名してる人が本当に少ない)。「ママは口ださないよ。あんたにまかせるから」と最初から言っておいたので、スタスタとカズが一人で玄関へ向かった。1階なのですぐそこ。やりとりが聞こえる。

ピンポーン! 「はい?」(緊張した声でカズ)「○○くん、いますか?」「あ、コ○ヤくん? ちょっと待ってね~!」とお母さん。その後のやりとりはよく聞こえなかったが、お母さんの「わざわざ届けてくれたのっ?」と言う明るい声だけが聞こえた。

戻ってきたカズに、本人と会ったかと聞くと、「いた。“ありがとう”って言ってくれた!」と嬉しそうに言った。もうそこでジーンと来たのだが、続けてカズが、「あーもう緊張した! 今でもドキドキしてる~」と胸を押さえたので、遂にこらえきれずに泣いてしまった。

「ゆうやけこやけ~うんこ~」と歌いながら駈け出したあっくんを追いかけて走っていってしまったカズの後を、私は子どもみたいに、袖で涙を拭いながら歩いた。

そういえば、家を出る前に、「はいこれ」とか言って、渡す練習をしてたっけ…。自分の緊張より、相手が困ることを想像して、勇気を振り絞って一人でよく行けたね。大丈夫だよ、カズ。その誠実さと優しさがあれば、たとえ誰かにいじめられたとしても、きっとみんなわかってくれる。ありがとう。優しい子に育ってくれて、どうもありがとう。

家に帰ると、「もうおそと、くらいと?」とあっくんがカーテンを開けようとしたので、「あ、あっくん、開けんで。見えちゃうから」と言った私に、あっくんが「なにが? ハゲ? っつーか、かぶってないのかよ!」と答えた。なんか、この違い…(苦笑)。いや、カズとは違う面で、あっくんも優しい。私とダーも、気を遣うところ、優しさを見せる場面が違う。自分のモノサシだけで相手を批判するのは愚かだし、とってももったいないことなんだ。

家に帰ってしみじみ、子どもと一緒に生きていて、今後こういう感動に出会えるのなら、もっともっと長く生きていたいなと強く思った。

カズはサッカー。あっくんはゲームの後、録画。ポケモンの現在のオープニングテーマ、ダイスケの歌を、「おれ、このうただいすきになっちゃった」と言って何度も見ていた。