完全に飲み過ぎ。朝、起きられず能古は間に合わなかった。二度寝して汗をかいたので酒はいい具合に抜けている。晴天につき、相変わらず起きた瞬間からゲームばかりしている子どもたちを小戸公園にでも連れて行こうかと思ったが、それではすべての義理を果たさないことになってしまう。
今日も麦茶のおじさんは稲刈りに精を出しているはずだ。子どもらが喜ばないのはわかっていたが、そして私も体調万全ではないが、午前中だけ手伝いに行くかと支度をしていると、カズが「稲刈りってたくさん人が来ると?」と聞いてきた。彼は農作業自体は何とも思わないが、恐らく人に会うのが嫌なのだ。
「あんたね、人と関わらないと生きていけないとよ。ママも知らない人に会うのはすごく苦手なの。でも、頑張っていろいろ出かけていかないと知り合いは増えていかない。Sさん(麦茶のおじさん)はね、ママが抗がん剤で一番つらい時に、少しでもラクになったらいいねと全然知らないのに麦茶をくれたり、お正月にはお餅をわざわざ持ってきたりしてくれたと。だからママはSさんが困っている時には、お手伝いをしたいと。ご恩を返したいのよ」と話しながら、胸がいっぱいになってボロボロ泣いてしまった。知らない土地で、知らない人に、弱っている時に温かくされ、どれだけありがたかったか、それだけは伝えておかないと。
親に泣かれたら、さすがにイヤとは言えない。おにぎりと水筒を持って握って自転車で出かける。
いつも危ないなぁと思っていた交差点で、バイクと車の接触事故を目撃。ちょうど救急車を呼んだところだったので、何もせず立ち去る。
畑の様子が他と違うので、すぐにわかった。Sさんいわく、機械乾燥がほとんどの中、自分のようにいちいち穂を立てて天日干しするやり方は、「キ◯ガイ」なのだそうだ。
カズもあっくんも張り切って動いた。

特にあっくんは、竹を土に刺して十字に組む稲穂の土台づくりをせっせとやっていた(でもすぐに飽きた)。

カズは「ちょっとおいで」と言われ、稲刈り機を持たせてもらい、すごく嬉しそうだった。

そして能古同様、農作業では彼の本領を発揮、力持ちでいつまでも根を上げることなく、せっせせっせと働いた。遠くにある竹も自ら進んで取りに行ってくれてとても助かった。
Sさんが刈り取った稲の束を立てかけていくのだが、片付けたそばからSさんがまた刈っていくので、まったく終わらん。「izちゃん、のんびりやらんと、へろへろになるよ」と言われた。せっかちな私、実は能古でも同じことを言われた。
稲穂とてんとう虫の色合いがこの上なくきれいで、見る度に胸を打たれた。

正午前に休憩してみんなでお昼を食べる。Sさんの奥さん手作りの、かしわのおにぎりがふるまわれた。いつのまにか、あっくんがカズ以上の超人見知りになってしまった。知らない人に話しかけられても、ろくに答えず、私のべたべた甘えて寄ってくる。おにぎりをもう一個食べていいかと自分で聞けず、私に「ママ聞いて」とお願いしてくる。いつもの暴れん坊ぶりを発揮したほうが可愛いのに!
あっくんはもう飽きて働かない。一人でずっとテントにいた。私も帰ろうとは思っているのだが、あと少し、あと少しと延び延びになってしまった。他の一家族も娘さんのトイレに行っちゃったし、Sさんが見かねたのか、「今日は終わり!」と声をかけてくれたので解散。

足が疲れていて自転車で来たことを後悔した。帰りの体力を残しておかなくては!
頑張った子どもたちにミニストップでソフトクリームを食べさせ、私はアイスコーヒーを飲んで休んでから帰った。
まだ14時! ベランダに出て洗濯物の乾き具合をチェックしながら晴れた空を見上げ、「あぁ今日はいい日だった」「しあわせだ」と何度も思う。生きるということ。大事なことがわかった。なんかひとつ、また、吹っ切れた。
少し横になって休んで、夕方から仕事もした。
夜、ごはん、ひじきと大豆の煮物、豚バラかりかり焼き、かぼちゃとオクラの天ぷら、トマト、オリーブ。カズはエビの胡麻油焼き、私は卵かけ玄米、ナスとソーセージのトマト煮込みを追加。
得難い経験をしたせいか、なんだか知らぬがあっくんハイテンション。疲れて眠るかと思ったのに全然寝ない。何度注意してもキャーキャー走り回っているので、遂に怒鳴ったら、私の顔色を伺ってトーンダウンした。
カズは、寝る前、「今度いつSさんとこ行くと?」と聞いてきた。「稲刈りは年に一回だから、もう行かないよ」と言ったら、「え~、行きたい~」と珍しくゴネた。