退院の朝。強風をともなう雨。入院時より体重が2.5kg減っていた。
これまでのように何でもシャキシャキとできないので、早朝からゆっくりと帰り支度を始める。
月曜は部長回診。今日でさよならとなる担当医に「先生、本当にありがとうございました。励まされました!」と握手を求めると、「でも強かったですよ、Kさん。うん!強かった!」と言われた。
てっきり若いお嬢さんと思っていた食堂で喋った患者さんと洗面所で会った。彼女も今日退院とのこと。ワンピにちょっと凝ったストールを巻いた私の格好を上から下まで眺め、「昨日も思ったんですけど、いつもちゃんとお洒落していてすごいですね~。きっと入院中の気分にかかわりますよね、私も見習います!」と言われる。パジャマ持ってないだけなんですけど…
余命を言われた隣のベッドの子も朝イチの採血の結果、白血球が無事上がり、本日、抗がん剤を打てることになった。看護師さんと話をしていて、「ごめんね、からださん。これまでムリばっかりさせてきたから、これからはだいじにするけん」と言っていて、「ホントだよね~」と言う。
実は私と彼女には共通点があった。彼女は零細企業に経理として勤めていて、子どもを産んでからずっと産休も取らず、赤ちゃんを傍らに置いて仕事をしてきたのだそう。泣いたら抱き上げておっぱいをあげ、眠っている間に急いで仕事を片付ける日々…。保育園か他人に預けて仕事をするのであれば、産後すぐで体はきつくても、仕事している間に育児から開放されてリフレッシュすることはできる。でも、仕事と育児の境界のない暮らしは本当に心身ともにきついのだ。
あと、大量飲酒者であること。うちと同じくダンナが一滴も飲めない体質なので、「外で飲む時は帰り運転してくれるからラクよねー。でも、お店の人、必ず、ダンナのところにビール置こうとしない?だから“こっちこっち!”って…」「そうそう!」というような会話をしていた。さらに私よりツワモノなのは、ダンナに何度もゲロの始末をさせたと言っていたところ。互いに、アルコールが乳がんのリスクファクターになるなんて、まったく知らなかったという点も同じである。
だから今日お別れをする時も、かなり切なかった。私は本当は彼女ともっともっと話したかったのだ。だけど、どう声をかけていいかわからなかった。近づきすぎて、「その日」が来た時に、自分自身耐えられるだろうかというずる賢い計算も少しあった。
アドレスも交換せず、最後の最後に、「互いにチビがいて大変だけど、頑張ろうね」としか言えなかった。彼女も笑いながら今にも泣きそうな微妙な表情を見せていた。
事務手続きを終え、いざ退院。玄関に師長がいたが、無視。私は見切った人間にはとことん冷徹だ。
小学校は卒業式でカズは学校が休みなので、子ども2人を乗せて、ダー迎え。いつもの天神の蕎麦屋「玄」。リニューアルしてビジネスホテルと一体化し、お洒落になっていた。
いったん帰宅して、ダーは打ち合わせのため、電車で再び博多へ。お疲れ様です。
パパがいない間に、あっくんに、「パパはね、あっくんがお熱出たからアイス買ってくれたんだって。やさしいね」と言うと、目をシバシバさせ、「うれしいけどないちゃう~」と言った。「うれしくても涙でるとよ」と教える。カズにそっくり。うちの子はおセンチだなぁ。
2人はゲームを散々やったあと公園へ。その間、私は掃除。カズの友だちの一年生とボールの取り合いなどでバトルしたようで、あっくんは「てっぽうばんばんやった」と大コーフン。
ダー帰宅後、姪浜の餃子店。別記。
いい気分で帰宅した後、カズのコートの汚れが気になったので洗おうとしたら、なんとポケットにガム! ポケット内がくっついてベチャベチャになっている。信じられん! 何が悲しゅうて、あんな美味しいものを食べたあとに、大嫌いな人工香料のニオイをかがなければならないのか。お湯で溶かしたり冷水をかけて固まらせたり、試行錯誤して洗いながら腹が立って、仕方ない。その後、あっくんが食べたいというので、ついでにあげた鼈甲飴をカズが「オエ!」と言って口から出そうとした時に、思わず「バカじゃないの!」と言ってしまった。
あっくん、風呂上がりに水を飲ませたら、飲み込まずにいつまでもブクブクうがいをしている。そのうち、カズのおならに笑って水を畳に吹き出し、逆ギレしていた。いつかそうなることは予想できていたので怒ろうと思ったが、あまりにバカバカしくて私まで吹き出してしまった。
就寝前のカズ。「あした帰れないように、パパが乗るその飛行機の便を壊す!」と爆破宣言をしていた。私は子どもたちに、こんな哀しい思いをさせていたのだなぁと今さらながらに気づいた。
あっくんは餃子屋で数分仮眠したことで完全復活。子どもらがコーフンして全然寝ないので、「早く寝ないとパパのいびきが始まるよ。うるさくて眠れなくなるよ」と言ったら、まだ布団にも入れずに仕事しているダーが隣室で「ガオ~」といびきの真似をしたので、子どもたちがキャーキャー笑った。