コトノハマニア

言葉を紡いで生きていく

二分の一成人式の憂鬱。「将来の夢なんかない」と泣く我が子になんて声をかければ?

自室で仕事をしていたら、22時前になっても次男が風呂に入った様子がないので見に行くと、立ったまま鉛筆を握りしめて泣いていた。

机の上には一枚のプリントがあり、タイトルを見ると、来たる「二分の一成人式(にぶんのいちせいじんしき)」で発表する自分の将来の夢とその理由を記入する欄が空白になっていた。

私たちが子どもの頃にはなかったけれど、今の日本の小学校では、成人の1/2の年齢である10歳を迎えたことを記念して小4を対象に行われる「二分の一成人式」が広く浸透しつつあるらしい。

長男の時、私は抗がん剤治療の真っ只中で体調が悪く、参加することができなかったので詳細を知らない。子どもの成長を祝う素敵な行事なのかしら、くらいに軽く考えていたが、次男と会話するうちに、これはなかなか厄介だなと思えてきた。

 

 

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小4の男の子ならYouTuberとかじゃないの?

以下、やりとり。

「将来の夢とか、やりたいことなんか、なんにもない・・・」とはらはら泣く息子。

「前に会社員になりたいって言ってたじゃん。それでいいとよ」

「そんなん書いたらみんなに馬鹿にされる。先生は“夢は大きく”って言ってた・・・」

「じゃぁなんか大きな夢を書けばいいじゃない?社長とかは?」

「でも失敗するかもしれない」

「失敗したっていいとよ。ねぇ友だちが失敗したら笑う?笑わないでしょう。誰だって失敗することあるんだから。Aが失敗したって誰も笑わないよ」

「失敗したら立ち直れないし、そしたら、もう復活できない・・・」とまた泣く。

「なんで?あんた負けず嫌いなんだから、いくらでも復活できるでしょう、大丈夫よ。それとも失敗したらお母さんが怒るって思ってるの?(内心ドキドキ・・・)」

「ううん」と首を振る。

「みんなYouTuberとか書くんやないと?」

「そんなの書かない。プロ野球選手とか・・・でもおれは・・・」

「いいじゃん、何でも。自分が好きなこと書けば。Aはスポーツ得意じゃない?歌も絵も上手やし。何をやってるときが一番楽しい?」

「なにもない」

「ずっと子どもでいたいと?大人になりたくないとか?」

「そんなんじゃない」

子どもの気持ちにうまく寄り添えない

という感じで気持ちを探ろうとしても、励ましても、いくつか選択肢を提案しても、いっこうに首を縦に振らず、泣くばかりで、もうどうしていいかお手上げ状態となってしまった。(前にも書きましたが、私は発達障害の傾向があり、テーマに基づいた議論を交わすのは好きだが、こういう人の気持ちに寄り添う系の会話が苦手だ。感情を抜きに論理ですぐ結論を出したがる)

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おっとり穏やかな長男とは違って、次男は私に似て感情の起伏が激しく、一度、気分がオチるとどうにもならない(=人の話を聞かない)ことがわかっているので、「もういいから一回お風呂に入ってきたら?なにかいいアイデアが思い浮かぶかもよ」と言うと、泣きじゃくりながら風呂場へ向かった。

長男は私の言うままに医者と書いた

その間に長男の部屋をノック。「ちょっと!Aが、二分の一成人式の紙が書けないって泣いてるんだけど!みんな何書いてた?」と聞いたら、「オレは医者とか適当に書いたけど・・・」。そうだ、長男の時はいちおう相談には乗ってあげたんだった。「あんた未熟児で生まれてたくさんの人に助けられて今があるんだから、人を助ける医者になるって書けば」と私が言ってしまったのだった。それで素直な長男は、「そやね」と言って書いてそのまま発表したのだ、思い出した!

 

「もー、何なん?みんなプロ野球選手になりたいとか書くと?」と言ったら、「いや4年生なんだから、さすがにそれは無かったような・・・。あ、でも一部にはいたかな、サッカー選手とか、看護師とか」「前、Aは会社員になりたいって言ってたとよ」「じゃ、それでいいじゃん」「そうやろ~」「そういえば隣の小学校は、夢とかじゃなくて、こういう人になりたいみたいな人物でもよかったって言ってたよ」「そうなん?ありがとう!」。

 

それはヒントになるかも!?と風呂上がりの次男に話しかけようとしたら、もう泣いておらず表情も曇っていなかった(良くも悪くも気分が変わりやすいのである)。

 

「いいこと思い出した・・・」とバスタオルで頭を拭きながら言う。「なに?」「グーグルの小学生のなりたい職業の第5位に“会社員”って書いてあった」と。とりあえず泣きながら眠るようなことはさせたくなかったので、「よかったね、じゃ、それ書けばいいじゃない」と言ったが、内心は複雑で。

 

なん?私に聞く前に既に調べてたわけね・・・。そしてみんなが思うものだから安心して発表できるわけね。

 

「別に、みんながなりたい職業じゃなくても、Aがなりたいと思う職業があれば、それ書けばいいとよ」と言ってはみたが、自分でも虚しかった。私がいつも「みんなどうしてる?」みたいなこと聞くから、そういう思考になっちゃうんだよね。

 

その後も、「なぜ会社員になりたいのか?」という理由を書くのに考え込んでいたが、なんとか書き終えた模様。

夢を持てない家庭環境に問題がある?

二分の一成人式の是非はともかく、今日のやりとりで色々な問題点が浮き彫りになった。

 

1.困ったことがあるのに私に言ってこない

 →お母さんは忙しい、多分相手にしてくれない、相談しても怒られるだけ。

2.自分の意見がない

 →これは私も長男も同じ。親が支配的だから?私が意見を押し付けていた?

3.自己肯定感が低い

 →同上。自分には何もできない。失敗を乗り越えられないと思っている。

4.プライドが高い

 →同上。人に笑われるのが嫌。自分で自分の失敗が許せない。だから挑戦できない。

5.考える力がない

 →いつも情報を与えられる動画やゲームばかり見ているので深く思考する力がない。

 

「夢がない子」でググったら、”子どもは現実を見ている、自分の家が経済的に夢を見られるような状態にないとわかっていて諦めている“という記事が散見されて、凹んだ。確かに次男が生まれてからはずっと、うちには夢をもたせるような環境はなかったからなぁ。ずっと生活に余裕がなく習い事すらさせてあげられなかった期間が長かったし。

 

うーん、でも習い事云々より、やっぱり私のメンタルの問題をそのまま引き継いでいるというか、性質が似ているだけに余計にまざまざと見せつけられた感があり、ショックが大きかった。

結局は親子して色々考えすぎ

テキトーでいいや!みたいな感じがまったくない真面目さゆえに悩むのだろうし。前に話したときには(基本的にはおしゃべりでお調子者)、「おれ、人は何のために生きるのか、人生のゴールはどこなのか、考えることがよくある」って言ってたし、その答えを聞いたら、「笑って生きること」にたどり着いたそうなので、そういう禅問答のようなことを小さな頭の中でぐるぐる考えているのだから、思考する力がないというのは彼に失礼なのかもしれないけれど。

 

なんでも自分のせいにして落ち込んでしまうので、最近は、「私のせいじゃない」と開き直って生きるようにしていたが、今日ばかりは母親、いや父親がいないんだからその役割をも果たす、私のせいだなぁと、こっちが泣きたくなった。

 

※年始のご挨拶に書いたとおり、吐き出し長文記事で失礼しました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

※すいません、反響が大きいので追記させてください。もちろん、「夢がなければそれでいい。それを話せばいい」というのは、本人に最初に言っています。それでも首を振るので色々提案してみました。

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子から親への感謝の手紙、親からも手紙や歌とか

二分の一成人式のことを書こうと思ったのに、すっかり我が家の問題点にすりかわってしまいました。で、肝心の二分の一成人式ですが、調べたらすごいことになってるんですね。

joshi-spa.jpママたちのリアルなコメントも痛快、興味ある方は見てみてください。正直、私はこの儀式の誕生の背景を読んで気分が悪くなってきてしまいました。あー、憂鬱だー。

 

でも、この記事のもとになっているというこの本はめっちゃ読みたい~。